ラリー・シャーマン (シカゴ)


ラリー・シャーマンはシカゴにあるプレス工場「Precision Record Lab」
のオーナー兼オペレーターの中年白人男性。
「Fantasy」 「On&On」と立て続けに大ヒットを飛ばし
何度もプレスを頼みに来るVince Lawrenceに金の匂いを感じとりました。

「なあ、俺と一緒に組まねえか?今後プレス代は取らない。
 その代わり、儲けは折半でどうだ。俺はニューヨークに
 知り合いのプロモーターもいるぞ。」
※1

1.Jesse Saunders
Vinceの父がやっていたMitchbal Recordsはリリースが遅く
「Fantasy」の時もレコード発売にかなりの時間を要していました。
時間の勝負と考えたVinceとJesse Saundersはこの申し出を承諾。
はじめてのハウスレコードはデトロイト、ニューヨークでもヒットし
一週間で1万~1万五千枚、約500万円の売り上げで豪遊しました。


Fresh - The Real Love (1984)
味をしめたラリーは自らレーベル「Precision Records」をはじめます。
Jesseに別名義でいいから曲を作ってくれないかと頼んできました。
この曲はJamie Principle"Your Love"と同じ音で作ったので
JesseはJamieから嫌な顔をされてしまいました。

2.粗悪なプレス
何を出しても儲かる状態で、ラリーは欲を出し始めます。
彼は古いレコードを大量に二束三文で買い付け、リサイクルして
そこらに気泡や凹みのある質の悪い盤でリリースしだしたのです。
ジャケットも古いレコードから再利用する有様でした。


Le' Noiz - Get Out (1985)
Jesseはファンを失うことを恐れ、他のプレス先を探しました。
幸いにもロサンゼルスのWarrior Recordsを見つけた彼は
ラリーが新しく立ち上げたレーベルTRAXにLe' Noiz名義で
1枚だけリリースし、彼とのビジネスを絶つつもりでした。

3.Vince Lawrence
Jesseの自立により、不安になったのはVinceです。
楽器には詳しいもののミュージシャンでなかった彼は
Jesseのバンド「Jesse's Gang」のステージには立てず
生活のためにTRAXのA&Rになりたいと申し出ました。

彼はAdonis、Marshall Jefferson、Frankie knuckles
らに契約させることに成功。大活躍します。
Adonis
「ファックユー!メ~ン、いったいどういうことだ!
 自分で出すつもりだったのによ!」
※1
Marshall Jefferson
「Move Your Bodyは自分のレーベル用に頼んだんだぞ!
 何でTRAXからでてるんだ!」


Vince Lawrence、いったいどんな契約したんだ。

4.D.J.International
ラリーは次に、Rocky JonesのレーベルD.J.Internationalの
プレス下請けを開始。しかしここでも欲を出しました。
依頼を受けると、自分用に余分な数千枚ものブート盤を作成。
顔の広い彼はデトロイト、ニューヨークで売りさばきました。

ラリー・シャーマン
「3000ドルをアーティストに支払うとして、スタジオ代を
 抜いて渡せるのは1500ドルだ。それにしたって、1万5千枚
 売ってトントンってとこなんだぜ。UKでコンピなんかに
 まとめられでもした日にゃあ儲けが減るから、もっと必要だ。
 
 だけどそれだけの数を売って金を渡さないとアーティストとして
 やっていけない。小銭なんか後先考えずパーッと使っちまう
 連中だから、一文無しになっちまうんだ。」※2

5.Jamie Principle
Frankie Knucklesがクラブでプレイした"Your Love"が大ヒットの
Jamie Principleは、もうひとつのヒット曲"Waiting On My Angel"
をいよいよレコードでリリースしようかという段階でした。


Jamie Principle - Waiting On My Angel (1985)
これを聞きつけたラリーはさっそくあの手この手でアプローチ。
しかしすでに悪名が知れ渡っていたため、Jamieは別のレーベルから
リリースし、プレスも別の工場に依頼しました。

ラリーは金ヅルを手に入れられず激怒。適当な話を作り上げ
Jesse SaundersとVince Lawrenceに曲作りを依頼します。


Jesse Saunders - Waiting On My Angel (1985)
彼の依頼はWaiting On My Angelのカバーでした。
Vinceが新しい詩をつけ、Jamieの発売から24時間後にリリース。
レコード屋のコネクションを使って売りまくりました。


6.裁判
Jamieの曲をリリースしたPersona RecordsはLarryのやり方に怒り
すぐに著作権侵害による排除命令を申し立てます。これに対し
ラリー側の弁護士は反論。理由の無い取引制限だと主張しました。

判決はなんとラリーが勝利。「歌詞を新たにしたカバーソングは
オリジナルをキズつける物ではなく、オリジナルの発売から
24時間以上経過していれば著作権侵害にはあたらない」
という判例ができました。

負けたPersona Recordsは取引制限による損失補填まで
はらう羽目に。ともあれこれ以降、歌詞を変えたカバーは
オリジナル作者の許可無く作ることができるようになりました。

7.Your Love
Frankie Knuckles
「Traxに曲を奪われたことは、ちょっとほろ苦い経験なんだ。
 僕とJamieから曲を盗んだも同然だからね。彼等が僕たちの楽曲を奪って、
 我が物顔で使ったんだよ、あの馬鹿野郎どもが。
 Traxと共同契約した覚えなんて全くないんだ。Traxから発売された
 僕の音源には絶対にサインなんかしないよ。」
※3


Frankie Knuckles - Your Love (1987)
AdonisやMarshall同様、のちにJamie Principleの曲も
勝手にTRAXからリリース。しかもJamieより知名度のある
Frankie Knuckles Presentsというタイトルをつけて売られました。

本人がここまで怒っているのに、2004年でもなお
「Frankie Knuckles Presents His Greatest Hits From Trax Records」
というアルバムすら存在します。 もう、やりたい放題。



※1 一部ブラック・マシン・ミュージックより
※2 RA Playing favourites: Frankie Knucklesより
※3 Larry Sherman VS Peopleより

House Music: The Real StoryHouse Music: The Real Story
(2007/11/30)
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